総務省トップ > 政策 > 白書 > 令和元年版 > サイバー攻撃等の経済的損失
第1部 特集 進化するデジタル経済とその先にあるSociety 5.0
第3節 ICTの新たな潮流

(2)サイバー攻撃等の経済的損失

サイバーセキュリティに関する問題は、どの程度の経済的損失をもたらすのだろうか。この点について、国内外で様々な調査・分析が行われており、その概要は図表1-3-3-10のとおりである。損失の範囲をどこまで捉えるか等により、数値に幅が出てきているが、例えば、米国シンクタンクの戦略問題研究所(CSIS)がセキュリティベンダーのMcAfeeの協力を得て行った分析では、2017年にサイバー犯罪により生じたコストは、全世界で6,080億ドルとなっている。また、我が国を対象とした調査・分析もいくつか存在し、一社当たり億円単位の損失が発生するというものとなっている。

図表1-3-3-10 サイバーセキュリティに関する問題が引き起こす経済的損失
(出典)各種公表資料より総務省作成55

また、一般社団法人日本サイバーセキュリティ・イノベーション委員会(JCIC)が、日本国内で情報流出等の適時開示56を行った企業を調査したところ、株価は平均10%下落し、純利益は平均21%減少していたとの結果が出ている(図表1-3-3-11)57

図表1-3-3-11 セキュリティ事故適時開示後の株価と純利益の変化
(出典)JCIC

このようなサイバーセキュリティに関する問題が引き起こす経済的な損失を踏まえると、サイバーセキュリティを巡る問題は、ICT部門にとどまる問題ではなく、経営レベルで取り組むべき課題であるといえる。他方、前述のNRIセキュアテクノロジーズ株式会社による調査では、我が国はCISO(Chief Information Security Officer)を設置して経営層が就任している割合が低いとともに、セキュリティ対策の計画の策定状況が低調である(図表1-3-3-12)。

図表1-3-3-12 セキュリティに関する経営レベルの取組状況
(出典)NRIセキュアテクノロジーズ(2018)「NRI Secure Insight 2018」を基に作成

ただし、JUASの「企業IT動向調査2018」によれば、経営幹部の情報セキュリティへの関与度合いが高まっている傾向が見られ、特に金融分野においては、8割が経営課題としてとらえている(図表1-3-3-13)。経営幹部が適切にサイバーセキュリティに責任を持つ体制と、そのような体制を支えるサイバーセキュリティ人材の確保は車の両輪であると考えられ、現在の我が国における人材の流動性の状況を前提とした場合、この2つを連動的に進めていくことには困難が伴うことも考えられる。しかしながら、あらゆる産業にデジタルが一体化していく流れの中で、産業・企業の持続的な発展を損なわないためには、避けることの出来ない重要な課題であるといえよう。

図表1-3-3-13 業種グループ別 経営幹部の情報セキュリティへの関与度合い
(出典)JUAS(2018)「企業IT動向調査2018」


55 CSIS and McAfee(https://www.csis.org/analysis/economic-impact-cybercrime別ウィンドウで開きます
Cybersecurity Ventures(https://cybersecurityventures.com/cybercrime-damages-6-trillion-by-2021/別ウィンドウで開きます
Microsoft and Frost & Sullivan(https://news.microsoft.com/apac/2018/05/18/cybersecurity-threats-to-cost-organizations-in-asia-pacific-us1-75-trillion-in-economic-losses/別ウィンドウで開きます
Accenture(https://www.accenture.com/_acnmedia/PDF-96/Accenture-2019-Cost-of-Cybercrime-Study-Final.pdfPDF
JNSA(https://www.jnsa.org/result/incident/data/2018incident_survey_sokuhou.pdfPDF
トレンドマイクロ(https://www.trendmicro.com/ja_jp/about/press-release/2018/pr-20181219-01.html別ウィンドウで開きます


56 適時開示とは、金融商品取引所(東京証券取引所等)の規則により上場企業に義務付けられているものであり、重要な会社情報を投資家に対してタイムリーに伝達することが求められている。

57 https://www.j-cic.com/pdf/report/QuantifyingCyberRiskSurvey-20180919(JP).pdfPDF

テキスト形式のファイルはこちら

ページトップへ戻る